進路/就職状況

進路/就職状況

就職先の機関等の名称

株式会社インテック、宇宙航空研究開発機構、沖電気工業株式会社、株式会社コア、興和株式会社、国立精神・神経医療研究センター、産業技術総合研究所、株式会社資生堂、ジョンズ・ホプキンス大学、ジョンソンコントロールズ株式会社、スクリプス研究所、中外製薬株式会社、電子科技大学、東京工業大学、東京大学(先端科学技術研究センター、工学系研究科、情報理工学系研究科など)、株式会社糖鎖工学研究所、株式会社東芝、株式会社日本政策投資銀行、日本電気株式会社、日本放送協会、株式会社博報堂、ボルドー大学、マサチューセッツ工科大学、三菱化学株式会社、三菱電機株式会社、立命館大学理工学研究所
(平成23年3月修了~平成25年9月修了者の実績)

職種(順不同)

大学教職員、企業等研究職、製造技術者、情報処理・通信技術者、
事務従事者 など

修了生の声

宮本 大輔(先端学際工学専攻修了・神崎・高橋研究室)

私は2018年3月に先端学際工学専攻を修了し、2018年4月に外資系クラウド企業に入社しました。在学中はスーパーコンピュータ「京」を用いて、約70万個のCPUコアを並列に稼動させながら昆虫脳を模した神経回路を効率よくシミュレーションする研究に取り組みました。博士論文のテーマは「次世代スーパーコンピュータ環境における効率的かつ大規模な詳細神経回路シミュレーション手法に関する研究」です。指導教員の神崎先生には、修士課程も含めて約7年間ご指導いただきました。愛情深く、いつも周囲を勇気づける先生の研究に対する姿勢に何度も助けられたことを本当に感謝しています。

 

多様なバックグラウンドをもつ仲間たち

先端学際工学専攻の特色として、まずあげられるのが、学生が多様なバックグラウンドを有しているということです。企業に就職後、再びアカデミアで研究をしたいという情熱を持って進学した人、留学後に先端学際工学に進学した人もいます。もちろん東大からの内部進学者もおりますが、修士課程が無いため、自然と様々な学部・学科の人々が集まってくるように感じます。

学生の多様性は、さまざまな研究のアイディアにもつながります。たとえば某メーカーの勤務を経て、自身と同じ研究室に在籍していた方は、実験の進め方や立ち居振舞いがとても整理されていました。企業の業務を通して学んで来られたことが、研究畑しか知らなかった当時の自分にとって新鮮で、大変よい影響を受けました。

先端学際工学専攻は、ユニークなバックグラウンドの人たちが集まって、互いに刺激を与えあう場です。「他とはちょっと違う何か」を求める人にとっては、ここで学ぶことは非常に価値ある経験になるはずです。

 

専門性という「武器」をもち、チームで課題に立ち向かう

講義は、他研究室の学生との交流の場となりました。特に印象深かったのが「先端社会論」という科目です。受講者が少人数で、密度の濃いディスカッションを重ねることができました。

ディスカッションのテーマには、明確な答えがないものあります。例えば「地球が滅亡し、脱出用のロケットが2台あり、搭乗する人員が集まっている。発射直前になって1台が故障した場合、誰を優先的に搭乗させて救出するのがよいか、搭乗する人員のプロフィールから選定せよ」というテーマを提示されたことがあります。

どのように議論を進めていけば、より良いアイディアが出せるのかという議論の進め方を考える力が試されました。私自身は、「工学的によい議論」をするにはどうしたらよいか、主に探索アルゴリズムの知識を駆使して考察したことが思い出されます。

一方で、官公庁に勤務しながら在籍していたクラスメイトには、社会科学分野に関する知識量に圧倒されました。専門が違えば、考え方やアイディアの出し方も異なります。それぞれが専門性という「武器」をもち、チームの中でバランスをとりながらひとつの課題に立ち向かう、先端学際工学専攻ならではの刺激がありました。

 

アカデミアの経験を企業に、企業での経験をアカデミアに

在学中の大きな懸念の一つが、博士号取得後の進路のことです。いま取り組んでいる研究が、果たして将来の進路に結びついていくのかという不安がありました。ですが、実際に就職活動を始めてみますと、研究成果のみならず、研究室のネットワーク管理や、研究のためのウェブサービスの構築などの様々な取り組みについて評価していただけることがわかりました。もちろん運やタイミングといった人智の及ばぬ要素も常にありますが、博士号取得までに日々積み重ねた知識と経験は、企業など幅広い環境で活かせるものだと今は強く感じています。

これからは先端学際工学専攻で学んできたスーパーコンピュータの知識や研究の進め方を、業務に活かしていきたいです。同時に、企業の側からも、クラウド技術を通した業務改善などでのアカデミアへの還元について、心に留めていきたいと考えています。

岡崎 善朗 (先端学際工学専攻修了・巌淵研究室)

広島大学大学院修士課程終了後、富士写真フイルム(株)入社。インドやネパールでのボランティア活動後、オリンパス(株)入社、医療機器の研究開発に従事。2014年4月東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程(イノベーターコース)に入学。

 

仕事中心の狭い視野が、全方位に広がった。

富士フイルムを退社後、2年半の海外放浪の際に障害者施設でボランティア活動を経験し、医療福祉に興味を持ちました。帰国後に医療機器の研究開発に携わりながら、 高額で専門的な医療を受けられない人たちの困難さを解決したいと考えていたところ、先端研のバリアフリー研究が先端技術を取り扱いながら社会実装を重視した研究を展開していると知り、門を叩きました。 先端研には、障害を持つ当事者のほか、工学系にも関わらず医師や心理学者、アーティストなどが所属し、ボーダレスな会話が飛び交っています。各分野の世界的な研究者からも直接学べます。 会社の仕事や社会の一面しか捉えられなくなっていた自分の狭い視野が、先端研の自由で多様な環境に身を置くことで大きく広がりました。 「人の空気を読むな」という言葉は今も胸に刻まれています。

博士論文のテーマは、エンジニアリングと医学(眼科)の学際領域です。PPP教育では自分の研究と近いけれど重ならない分野を選び、眼精疲労に関する実験心理学のプロポーザルを作成しました。 ここで心理学の指標の使い方を学び、博士論文にはその手法を取り入れました。海外の研究者と仕事をする際、PhD取得者の意見のほうが研究者としての意見が信頼されていると感じられる場面が何度かありました。 進学の動機は自分がやりたい研究を腰を据えて行うためでしたが、自由な環境で研究を楽しみながら学位を取得できたことに感謝しています。 これからは、病気や障害により日常生活で困っている課題を解決し、心に届く優しい技術の開発をしていきたい。

専門分野が異なる学生を指導してくださった担当の先生と、会社の業務を最大限に配慮してくれた会社の上司に感謝しています。

 

田辺 彩未(先端学際工学専攻修了・岡田研究室)

私は2012年3月に先端学際工学専攻を修了し、現在は日本電気(NEC)スマートエネルギー研究所に勤務しています。在学中は光通信デバイス用の半導体結晶に関する研究を行っていました。先端研では、研究の基礎能力を身につけることができたのはもちろんのこと、多くの人と交流する機会を得ることができ、自分の世界が広がりました。その経験を糧に、「社会に役立つものをつくりたい」という気持ちで、機能性を高めた蓄電システムの開発という新たな研究に取り組んでいます。

目標に向かってチャレンジするということ

筑波大学に在学していたのですが、指導教官の岡田至崇教授が先端研に移られるのをきっかけに、先端学際工学専攻に入学しました。研究で扱ったのは量子ドットと呼ばれる直径数~数十ナノメートルの半導体結晶です。岡田教授の指導のもと、レーザーなど光通信デバイスの高性能化に向けて、高密度で高品質な量子

ドットをつくるためにInAs(インジウムヒ素)系量子ドットの成長メカニズムの解明や、その過程を制御するための技術の開発を行いました。

研究室では、半導体の結晶を作り、分析をするという実験を繰り返しました。得られたデータを見て、目標に対して何が課題なのかを考え、また新たにチャレンジするという地道な研究でしたが、研究に対する取り組み方が身につき、忍耐力も培われたのではないかと思います。

先端研ならではの多くの人々との交流

先端研では、研究に集中できる時間と設備を与えてもらいました。また、周りの方々に励まされ、多くのことを教えていただきました。先端研には、専門分野や立場の異なるさまざまな人が所属しています。特に、私がいた連携研究棟はオープンラボがあり、世界中の研究者が集まっていました。工学系ばかりでなく、バイオ系などいろいろな分野の人と意見交換をすることができ、研究の幅が広がり、課題の解決にもつながりました。そのような交流を通して、いろいろな人と話すことは大事なことだと思いましたし、多くの人に助けてもらったことに感謝しています。

社会に役立つものをつくりたい

先端研では技術のための材料の研究でしたが、NECでは技術を使う立場からの研究です。研究の視点を変え、新しいことにチャレンジしたいという気持ちで飛び込みました。就職活動中にかけていただいた「何ができるかではなく、どうやって研究をしてきたかということを活かしてほしい」という言葉が印象に残っています。

研究分野が変わり、電気のシステムや回路などわからないことばかりですが、周りの人に教わりながら、社会に役立つものをつくりたいという目標のもとに研究を進めています。上司で主任研究員の梶谷浩司さんは、「企業の研究は期間の短いものが多く、次々と新しい研究に対応しなくてはなりません。そのためには、

多くの経験が役に立つので、事業に貢献する仕事だけではなく、好きな仕事もバランスよくやり自分の目標を実現してほしい」とおっしゃってくださいます。先端研での経験を生かして研究を進めていきたいです。

自分の世界を広げるチャンスに

先端学際工学専攻では、プロポーザルとプレゼンテーションという研究の基本を身につけるための授業がありました。プレゼンテーションは自分の研究を英語で発表するもの、プロポーザルは研究の企画書を作成するものです。プロポーザルは、当時は大変そうだと受講しなかったのですが、今となっては、プロポーザルを書く力は研究者にとって非常に重要であることを痛感しており、受講しておけばよかったと後悔しています。これから先端研で学ぶ人は、これらの講義を受けることをお勧めします。ほかにも先端研には、自分の可能性を広げるチャンスがいっぱいあります。先端研で過ごす間にチャンスをたくさんつかんで自分の世界を広げてほしいです。

田渕 理史(先端学際工学専攻修了・神崎研究室)

私は先端学際工学専攻を修了後、2013年4月からアメリカ合衆国のジョンズ・ホプキンス大学で博士研究員として働いています。在学期間中、本専攻の教授である神崎亮平先生の指導のもと「カイコガの嗅覚系機能ネットワークに関する光遺伝学及び神経生理学的研究」というテーマで、博士論文研究に取り組ませていただきました。

私は先端学際工学専攻を修了後、2013年4月からアメリカ合衆国のジョンズ・ホプキンス大学で博士研究員として働いています。在学期間中、本専攻の教授である神崎亮平先生の指導のもと「カイコガの嗅覚系機能ネットワークに関する光遺伝学及び神経生理学的研究」というテーマで、博士論文研究に取り組ませていただきました。嗅覚系の神経ネットワークは、脳の情報処理機構解明のための有効性が確立されている研究モデルですが、刺激として匂いを用いるため、時間的側面に関する解析が難しいという問題がありました。そこで私は、におい刺激を例えば光刺激のような時間分解能の高い刺激に置き換えることができれば、これまでほとんど分かっていなかった嗅覚系の時間的側面に関する情報処理機構について新たな知見が得られるのではないかと考え、研究に着手しました。具体的には「光遺伝学」と呼ばれる神経活動の光制御技術をカイコガ嗅覚系に導入することで、光を用いた嗅覚研究の方法論を確立し、この方法を用いることで、時間的に同時でないにおい刺激が、神経ネットワーク内で一定の時間窓で積分される神経機構を発見し、この神経機構が、カイコガ嗅覚系のにおいの検出感度増幅に直接的に貢献していることを明らかにしました。

なお、この研究成果は、査読付き国際誌である米国科学アカデミー紀要に発表することができました。研究は失敗の連続で成功は数えるほどしかなく、さらにその実験データを試行錯誤しながら、さまざまな側面から解析し、それらを論文にまとめ、論文投稿後も査読者の要求に応えるための不条理な追加実験など、学術誌として掲載されるまでの過程は苦しいものでした。しかしながら、いったん論文掲載の達成感を味わえば、その達成感をもう一度、何度でも味わいたい、生涯一研究を続けていたいと心から思いました。本専攻に入学されるみなさんも、在学中博士論文研究に取り組む過程において、そのような感動的達成感を味わっていただけるのではないかと思います。

桝田 祥子(先端学際工学専攻修了・玉井研究室)

2003年に、勤務先の化学メーカーを退職して、心機一転、先端研でフルタイムの大学院生になりました。それから早10年が過ぎ、現在は、薬学系研究科(出身学部)で社会薬学分野の研究を続けています。

企業内弁理士として働いていた私にとって、先端研での研究生活は、大変刺激的なものでした。一企業の利益だけを追求して知財戦略を立てていたころとはまったく異なり、何のために知的財産法が存在するのか、特に、医薬・医療分野で特定人に独占権を与える意義について真剣に考える機会に恵まれました。当時の先端研は、独立行政法人化前なのに、特許制度やベンチャー起業に関する教育に熱心でしたし、実際に起業されている先生方もたくさんいらっしゃったので、大学の研究成果を実用化するまでの長い道のりについて、現実をもとに勉強することができました。博士課程1年目(D1)の夏休みには、3週間ほどボストンで産学連携・技術移転の研修を受け、その後の半年間は、米国イリノイ大学に滞在し、技術移転に関する海外調査にも参加しました。これらの経験をもとに、「医薬品産業における知的財産保護」に関する学位論文をまとめ、今は、イノベーションとパブリックヘルスのバランスを踏まえた医療・社会システムづくりを目指して研究活動を行っています。

大学院生活を始めたころは、博士を取った後のことは何も考えておらず、きっとまた弁理士として企業で働くのだろうなと、漠然と考えていました。しかし、D3のときにハーバード大医学部の先生に「きみのような研究をしている人は、こっちに来て視野を広げた方がいい」と言われ、ポスドクとして米国でパブリックヘルス領域の研究者と交流したのをきっかけに、研究を続けることに決めました。

先端研の同級生には、いろいろな分野の研究者の卵がいました。だれ一人として同じ分野の人はいなかったように思います。私が「薬学」と「知的財産法」のかけ合わせだったように、一つの分野に収まりきれない研究テーマを持った人たちばかりで、彼らと交流するのも本当に楽しかったです。先端学際工学専攻は、ほかの人とは違うことがしたい人に、ぜひお勧めしたい専攻です。