東京大学

小泉研究室

小泉教授

日本社会の持続可能性、そのカギは
次世代型「まちづくり」による地域再生に

「共創まちづくり分野」の小泉研究室では、コミュニティ再生の実践に取り組み、研究へのフィードバックを重ねている。高齢化が進む「まち」をいかに再生すればよいか。自治体や企業との協働による「まちづくり」に加えて、「地域共創リビングラボ」における先端研ならではの先進的な研究活動にも取り組み、実践に裏付けられた「まちづくり」の理論構築をめざしている。

理論構築と実践検証を絶えず往復

理論的に構築したプランを実践で検証する。これが研究室の基本的なスタンスです。コミュニティ再生や「まちづくり」の研究を進めるうえで重要なのは、実践を通した検証を常に重ねる姿勢です。

日本におけるこれからの「まちづくり」研究では、高齢化が前提条件となります。高齢化が引き起こすさまざまな問題は多方面に及び、すでに各種コミュニティに深刻な影響を与えています。放置すれば、日本の社会保障や経済に大きなダメージをもたらすでしょう。

そこで、高齢化を前提としてコミュニティ再生をめざす「次世代郊外まちづくり」プロジェクトに取り組んでいます。プロジェクトでは「コミュニティ・リビング」という新しいコンセプトを打ち立て、プレイスメーキングの手法を活用したコミュニティ再生に挑戦しています。「まちづくり」のデザイン、プランニング、マネジメントに関する基礎理論を、実際のコミュニティ再生プロジェクトに応用するのとあわせて、実践を通して新たな知見を導き出し、他地域でのコミュニティ再生に応用できるモデルを構築するのが目的です。

先端研でも、「まちづくり」に関わるプロジェクトとして「地域共創リビングラボ」を立ち上げました。ラボの目的は、複雑化、個別化する地域の課題に対処し持続可能な社会とするため、マルチセクターが参加する仕組みや共創的手法を提供すること。文理を問わず多様なバックグラウンドを持つ気鋭の研究者たちと、新たな課題に自由に取り組めるのは先端研ならではのメリットです。

新たな公共性のあり方を模索

高校時代から数学や物理が好きだったのに、浪人時代になぜか哲学に目覚めた経験が、今につながっています。理系分野のなかでも社会との接点が多そうな建築関係に進み、都市工学の先生方との出会いに導かれ、都市計画やコミュニティづくりを研究テーマとするようになりました。

コミュニティを考える際、私の関心は常に「公共性」に向かいます。コミュニティとは個人のための空間ではなく、さまざまな人とシェアする空間です。そこには多種多様な市民はもとより、企業や行政など多元的なステイクホルダーが関わってきます。

これら異なる価値観を持ち、異なる環境に置かれている人たちが、どのように協力し合いながら、一つの場所で「まちづくり」を行っていくのか。物理的な空間、場所は一つしかない。けれども、そこに集う人たちは、実に多種多様。そんななかで「公共性」を確保する空間づくりを模索していきます。

現在取り組んでいるプロジェクトにおいても、実にさまざまなステイクホルダーが関わっています。現存する特定の空間において新たな公共性をゼロから創造していく。これは単なる研究に留まることなく、常に現実との関わりが求められるエキサイティングなチャレンジであり、やりがいを実感できるテーマでもあります。

総合芸術と捉えて楽しんでほしい

「まちづくり」や都市計画には、総合芸術的な側面があります。学問領域を問わず幅広い知見が必要であり、建築領域だけを学んでいれば事足りるような世界ではありません。哲学をはじめとして人文・社会科学系の学問、ときには政治学の知識が求められるケースもあります。

そんな研究を進めるうえで適切なサポートするのが、私の役割と心得ています。研究の方法論やノウハウ、関連領域についてのサジェッションなどを的確に行うためには、ある程度私の関心領域に近いテーマを持っている人が対象となります。

ただし、私が研究テーマを与えるようなことは一切ありません。自らテーマを打ち立てて、成果を出さない限りPh.D.とは認められないからです。研究室の出身者の多くは、研究職に就いています。先端研には幅広い領域のさまざまな研究者が所属し、「地域共創リビングラボ」のような環境を生かして研究もできる。自由に研究を進めたい人には、かなり恵まれた環境だと思います。

小泉研究室
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