東京大学
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田渕 理史 さん(神崎研究室)

  • 私は先端学際工学専攻を修了後、2013年4月からアメリカ合衆国のジョンズ・ホプキンス大学で博士研究員として働いています。在学期間中、本専攻の教授である神崎亮平先生の指導のもと「カイコガの嗅覚系機能ネットワークに関する光遺伝学及び神経生理学的研究」というテーマで、博士論文研究に取り組ませていただきました。

    嗅覚系の神経ネットワークは、脳の情報処理機構解明のための有効性が確立されている研究モデルですが、刺激として匂いを用いるため、時間的側面に関する解析が難しいという問題がありました。そこで私は、におい刺激を例えば光刺激のような時間分解能の高い刺激に置き換えることができれば、これまでほとんど分かっていなかった嗅覚系の時間的側面に関する情報処理機構について新たな知見が得られるのではないかと考え、研究に着手しました。具体的には「光遺伝学」と呼ばれる神経活動の光制御技術をカイコガ嗅覚系に導入することで、光を用いた嗅覚研究の方法論を確立し、この方法を用いることで、時間的に同時でないにおい刺激が、神経ネットワーク内で一定の時間窓で積分される神経機構を発見し、この神経機構が、カイコガ嗅覚系のにおいの検出感度増幅に直接的に貢献していることを明らかにしました。

なお、この研究成果は、査読付き国際誌である米国科学アカデミー紀要に発表することができました。研究は失敗の連続で成功は数えるほどしかなく、さらにその実験データを試行錯誤しながら、さまざまな側面から解析し、それらを論文にまとめ、論文投稿後も査読者の要求に応えるための不条理な追加実験など、学術誌として掲載されるまでの過程は苦しいものでした。しかしながら、いったん論文掲載の達成感を味わえば、その達成感をもう一度、何度でも味わいたい、生涯一研究を続けていたいと心から思いました。本専攻に入学されるみなさんも、在学中博士論文研究に取り組む過程において、そのような感動的達成感を味わっていただけるのではないかと思います。

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