東京大学
  1. ホーム
  2. 専攻について
  3. 海外への派遣
  4. ケンブリッジ大学クレアホール 夏季 Visiting Students 研修報告

ケンブリッジ大学クレアホール 夏季 Visiting Students 研修報告

2015年度レポート 工学系研究科先端学際工学専攻博士3年 山中 遼太

研修概要

この研修では、先端研の提携校であるクレアホールに滞在し、2週間のサマー・スクールに参加すると共に、ケンブリッジ大学または近郊の研究施設に訪問して2~4週間の研究活動に取り組むことができる。そこで、私は8月の1ヶ月間、ケンブリッジに滞在することとし、前半2週間でサマー・スクールに参加した後、後半2週間は近郊の研究所である欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI: European Bioinformatics Institute)を訪問した。私の専門はバイオインフォマティクスとデータベースであり、EBIはヨーロッパにおけるこれらの分野の先導的研究機関である。

ケンブリッジ中心街のマーケット

宿泊施設 (Robert Honeycomb Building)

部屋の窓から見える裏庭

サマースクール

今回受講したInterdisciplinary Summer Programmeはケンブリッジ大学の提供しているサマー・スクールのひとつであり、クレアホールから徒歩10分程度の場所にあるSidgwick Siteが一連の講義に使用された。ケンブリッジ大学の講師が教鞭をとるが、参加者は大学学部生から社会人やリタイヤ後の方々までが集まっており、市民公開講座に近い印象を受ける。とはいえ、1日あたり、1時間の必修講義と1時間15分の選択科目3コマ、さらに夜にも参加任意の講義があるため、暇を持て余すことはない。参加者の多くはイギリス国外の様々な国から来ており、また、休暇を積極的に学びに充てている方々も多いため、知的好奇心を共有しながら知り合いをつくることができる。

必修講義はその回ごとに異なる講演者により、政治経済から考古学や言語学まで、バラエティに富んだ内容が語られる。選択科目は様々なトピックから科目を選択できるが、分野を絞ってしまうと選択肢が限られてしまう。例えば、私の場合は全て科学に関連する科目を選択しようとしたため、ほぼ自動的に次の3つの科目となった。

1.Introducing psychology: mind, mental process and behaviour
2. History of science IV. The Scientific Revolution
3. History of science V. The invention of the modern world: mathematics, 1200-1700

どれも興味深い内容だったが、特に科学の歴史の授業は多くの方々に受講をおすすめしたい。新しい技術が大陸から大陸へと伝わり科学的思想の変革が起きていった様子や、哲学者や数学者の人物像や人間関係が、活き活きと語られ、歴史の面白さを実感すると共に古典的な科学や数学を改めて学び直したいという意欲が得られた。

Sidgwick Siteに隣接するキャンパス

昼食場所の一つ

研究室訪問

EBIはCambridge中心部から15kmほど離れたHinxtonという町に位置しているため、通学にはシャトルバスを利用した。このThe Genome Campusと呼ばれる広大な敷地内にはゲノム科学の研究所であるサンガー研究所と共にバイオインフォマティクスの研究所であるEBIが置かれている。現在、EBIの建物の隣では、10万人ゲノムプロジェクトのための大型遺伝子解析センターが建設中である。

訪問先の研究室では、25名ほどのメンバーがいくつかのチームに分かれてプロジェクトに取り組んでおり、各プロジェクトの進捗がよく管理されているという印象があった。また、バイオインフォマティクスの研究者およびシステム・エンジニアが互いの役割を認識して協力している。メンバーはヨーロッパの国々から集められているため多国籍で、この期間に就職面接に来ていた方々とも挨拶したが、その人材の豊富さに驚いた。

私はこの研究室で開発されたツールについて学ぶと共に自身のプロジェクトを進めた。また、偶然にも日本の研究者との共同研究に関するビデオ会議にも参加することができ、デモ・プログラムの開発にも協力することができた。今回の訪問は、EBIの方々と知り合う貴重な機会であり、今後もツールなどの知識や成果物を共有していくと共に、共同研究の機会を探っていきたい。

(2015年9月28日)

欧州バイオインフォマティクス研究所の外観

欧州バイオインフォマティクス研究所の内観

新しいゲノム配列解析センターの建設

ページの先頭へ戻る