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2022年度 常務委員あいさつ

大学院座談会

30年分の「先端力」を次世代へ

東京大学大学院工学系研究科 先端学際工学専攻 2022年度常務委員

稲見 昌彦


先端学際工学専攻は、創設30周年を迎えました。節目の到来を祝うとともに、当専攻を盛り立て発展させてきたOB/OG諸氏に教員の方々、現役学生そして事務の皆さんに改めて感謝申し上げます。30年は、博士課程を修了した研究者が独自の研究テーマを開拓・確立し、次の世代に志を引き継ぐまでの期間におおむね相当します。15 年で一つ下の世代、もう15 年でその次の世代が現れ、30年経つとすっかり入れ替わる感覚です。

この30 年で当専攻は、世界の先端を走る、数多くの人材を輩出してきました。実は私もその一人です。遠隔地のロボットを自分自身のように操る「テレイグジスタンス」を提唱した舘暲教授の研究室に、1996 年から1999 年まで在籍しました。当時は先端研に文字通り寝泊まりし、様々な分野の先生方の活躍を横目で見ながら、昼夜を問わず研究に明け暮れました。その経験が今の自分を形作ったことは間違いありません。

30年前には新鮮だった「学際」「国際」の旗印は、今ではすっかり当たり前になりました。ひょっとすると専攻が始まった当初は、分野をまたいだ交流は今ほど盛んではなかったかもしれません。異なる専門の間を取り持ったのは、各分野のトップ研究者が顔を揃える環境で育った学生たちでしょう。「子はかすがい」ではありませんが、当専攻で学んだ若手が分野をつなぐ橋渡し役となって、学問や国を隔てる壁を自由に越えて行き来できる環境を整えてきました。現在の研究テーマは、30 年前とはがらりと変わっています。社会やアカデミアの動向に連れて目標が変転するのは、先端を追う者の宿命です。先端研が掲げる「流動性」と「公開性」が、気鋭の人材を呼び込み続けたからこそ、常に時代を先取りする立ち位置を維持できました。当専攻の学生たちの活力が、研究を最先端に押し上げる原動力なのです。

ところが驚くべきことに、当専攻には現役の学生やOB が一堂に会し交流する仕組みがありません。そこで、この機に当専攻の同窓会を組織することにしました。まずはFacebookのグループとして、「先端淡青会(英名:Club RCAST)」を立ち上げました。教員・学生・卒業生の方々は次のURL にアクセスして、ぜひご参加ください。 https://forms.gle/qcyMkS9MWtZt2sMc9別ウィンドウで開く

ほかにも、卒業生やご家族を先端研にお招きするホームカミングデイなど、様々な企画を考えています。専攻での講義と同様、現地とオンラインのハイブリッド形式で、海外の方や多忙の中でも参加しやすくする予定です。狙いは旧交を温めることだけではありません。現役の学生・教員との交流はもちろん、企業や研究機関に広く浸透した修了生の人脈は、産学協働を促すプラットフォームになる可能性を秘めています。同窓生による寄付の仕組みも検討中です。海外のトップ大学がそうであるように、寄付金は先進的な研究を支える大きな基盤になり得ます。もちろん金銭面での支援に限らず、折に触れて相談に乗るなど、専攻で培った「先端力」を現役世代にぜひ還元していただければと思います。

先端研は「ミニ東大」と称するのが定番です。私はあえて「コンビニ」と呼んでみたい。常に店頭の品目が入れ替わり、新しい商品を楽しみに、ついつい寄ってみたくなる。誰よりも先へ行く研究を追い求める先端研、そして先端学際工学専攻は、そんな場所だと思っています。この伝統を絶やさず発展させていくのが、我々に課されたミッションです。教職員、学生、修了生のみなさん、力を合わせて次の30 年を作っていきませんか。

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