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学位取得者インタビュー VOICE 2

  • フェリシャーニ クラウディオ特任准教授
  • フェリシャーニ クラウディオ

    東京大学先端科学技術研究センター
    数理創発システム分野 特任准教授

    【論文題目】
    Measurement and numerical modeling of pedestrian flows(人流の計測と数値モデリング)
    【学位取得】
    2017年9月

数理創発システム分野のフェリシャーニ クラウディオ氏は、物理学的側面と心理学的側面の両面から群集の挙動について研究している。「歩行者が他の歩行者と衝突する理由」を歩行者集団の行動実験で明らかにした研究成果では、2021年に研究室の西成活裕教授らとイグ・ノーベル賞の動力学賞を受賞した。
「当時は先端学際工学専攻(AIS)に所属しているという意識はあまりなかったけれど、結果的にAISを選んで良かったし、修了生であるプライドを持っている」。AISに関する思い出を語ってもらった。


出会いのきっかけはシェアハウスから

現在、所属する西成研究室との出会いのきっかけは、約10年前に遡る。日本の企業でエンジニアとして勤務し、友人作りや日本語の上達のため、10人ほどのシェアハウスに住んでいた。海外と関わりながら、研究の幅を広げたいと博士号取得を考えていたとき、仲良くなったシェアメイトが「うちの父に聞いてみたら?」と提案。その父親こそが、2008年、2010年に2度イグ・ノーベル賞を受賞した小林亮氏(現:広島大学名誉教授)だった。小林氏に自分のやりたい研究テーマを話すと、「西成先生という知り合いがいるので紹介します」と話が進んだ。

イタリアの話で意気投合

実は、小林氏と出会う前から、西成教授の論文を読んで「自分がやりたい事とぴったり」と思っていた。西成教授の提唱する「渋滞学」では、様々な渋滞を分野横断的に研究する。対象は車だけに限らず、細胞内蛋白質やアリ、人間の群集や物流など多岐にわたる。

フェリシャーニ氏はスイスで流体力学を学んでいたが、当時から哲学や社会学にも興味があった。「技術だけではなく、社会や環境といった他分野を知ることで、互いのコミュ二ケーションを取れるような役割を担いたい」と考えていたところ、渋滞学を知る。「群衆を理解するためには、人間を理解しないといけない。そのためには、心理学や社会学の知識も必要。自分の得意な数学や物理を生かしながら、新しいことを勉強できるチャンス」と魅かれていた。

西成教授に会う前は「有名な先生だし、もしかすると厳しいかも」と思っていたが、小林氏の「合うと思うし、とても良い人だから」と言う言葉に背中を押され、初対面。西成教授の趣味はオペラを歌うこと。フェリシャーニ氏の母語がイタリア語のため、イタリアの話でも会話が弾んだ。お互い海外への関心も高く、西成教授から「ぜひいろんな所へ行って、いろんな人と議論してください」と言われ、AISへの入学を決めた。

論文審査での言葉を励みに

博士論文では人込みを0~100%で表す「混雑度」という定義を作り、流体力学をベースに計算して数値化した。例えば、一糸乱れぬ軍事パレードの行進は、同じ方向に同じ速度でみんなが進むので渋滞せず、混雑度0%と表せる。論文審査で副査を務めた神崎亮平教授からは、期待を込めて「面白いけれど、人間は物理学的な動きをするわけではない。認知し行動する。どうしたらきれいに歩いてもらえるか、考える必要がある。どういう風に回りの環境を認知するのか、動物の研究も少しやってもよいのでは」と指摘があった。フェリシャーニ氏自身も心理学的側面からのアプローチが必要だと感じていたため、神崎教授の言葉に、「自分がこれから進もうとしている方向は間違っていなかった」と確信でき、自信を持てた。

AISの魅力は自由闊達な環境という。「自分の得意なところを、自分らしく。どんどん深掘りすると結果も出るし、楽しんで研究できると思う。私の研究はエンジニア的な要素もありながら、他の分野にも関われる。先端研の研究者でいれてうれしい」。

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