研究・教育

ケンブリッジ大学クレアホール 夏季Visiting Students研修報告

2013年度レポート
東京大学 法学政治学研究科 修士課程2年
松浦 綾子

1.プログラムへの参加

 この度私は、東京大学先端科学技術研究センター(先端研)によるケンブリッジ大学クレアホールへの派遣学生プログラムに参加させて頂きました。1ヶ月のプログラムの中で、前半2週間はサマースクールへ参加し、後半2週間は自主学習に取り組みました。
 本プログラムは先端研と、ケンブリッジ大学の数あるカレッジの一つであるクレアホールとの間の協定に基づくもので、参加学生である私たちもクレアホールに滞在させて頂きました。

 

2.クレアホールでの生活

 ケンブリッジ大学では教官・学生ともに所属のカレッジがあり、クレアホールはその中では比較的新しく、留学生と大学院生を対象としたカレッジです。国際交流に重点が置かれており、過去にも多くの海外からの招聘教授や政治家の方などが滞在されたとのことでした。私たちが滞在した際も国際色豊かで、カナダ・オーストラリア・スペイン・チリ・ドイツ・中国・台湾・イタリア・オランダなどからの学生が勉強していました。
 各々の学生に一部屋が割り当てられ、私の部屋は最上階の3階でした。バスルームは3人、キッチンはビル全体(13人)で大きめのものを共有しました。食事のたびにキッチンを利用するため、同じビルに滞在する学生と話す機会が多く、特に心理学や経済学、医学など自分の専攻外の領域の学問を専攻する学生と話したり議論したりできたことが大変に貴重な機会に思えました。慣れない生活の中で自炊できる大きなキッチンがあったことも非常にありがたかったです。建物自体も新しいため、清潔で過ごしやすい環境でした。
  ケンブリッジの気候は温暖で乾燥しており、時折非常に強い雨が突然降る点を除けば夏でも涼しく天候が良いので快適でした。

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クレアホールの様子

 

3.サマースクールでの勉強

学部図書館

 

 滞在期間中の最初の2週間、私たちはサマースクールに参加させて頂きました。私が参加したのは①文明の勃興②イギリス政治の現代的課題、の2講義でした。いずれも内容が興味深いだけではなく、その分野を教養として学ぶ初心者が自然に先端的な内容にも触れられるような配慮がなされた楽しい授業でした。
① 文明の勃興では、いくつかの古代文明を対象としてその特色や成立過程について詳細な議論が行われました。文明に関する基礎的な知識の網羅に留まらず、最新の論文で通説がいかに覆されてきたかという点に力点を置き、各文明における政治体制や経済活動の分析を行う点が興味深く思えました。古代文明の分析を通じて人間の活動の本質に迫る事ができる授業構成と、教官のユーモア溢れる授業展開を堪能する事ができました。ディスカッションが盛んで、厳しいながらもネイティブのスピードで英語の討論をすることができたことも私にとっては大きな収穫でした。
② イギリス政治の現代的課題では、題名の通りイギリスが直面する現在の課題についての議論が行われました。移民問題、宗教問題、健康保険改定、高齢化、財政赤字などに焦点が当てられました。これらの問題は必ずしも全てを完全に日本が共有するものではないように思っていましたが、実際の内容を掘り下げて行くと共通の問題を抱えている事が浮き彫りになり、今後各国間で政策形成において連携できる部分や情報共有を進めるべき点なども多いのではとクラスメートらと話し合いました。新聞記事の引用も多かった事から、個人的に見慣れない英単語や言い回しに触れる機会が多かった点も勉強になりました。

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期間中自習に使用させて頂いた法学部図書館

 

4.個人での研究

 私は国際学力調査であるPISAの影響評価とその差異を規定する各国の政策形成の相違についての分析を行っていました。クレアホールはケンブリッジ大学の図書館が近いだけではなく、寮内の自分の部屋でも論文のアクセスが可能で電子ジャーナルのダウンロードがしやすかったことが非常に大きい利点でした。また、イギリス国内で同様の研究を行う教授にご指導を頂く事ができ、論文の道筋が立ちました。政策のEmpiricalな分析に関してイギリスは非常に先端的な研究をしているので、多くの専門家の方にご意見を伺う事ができて勉強になりました。

 

5.終わりに

 ケンブリッジ大学クレアホールで過ごさせて頂いた1ヶ月は、非常に実りの多いものになりました。大変良い勉強環境を頂けたこと、カレッジで生活する雰囲気を味わわせて頂いたこと、夏のイギリスの環境を楽しませて頂いたことなどももちろんですが、各国の様々な分野を専攻する学生と交流を持てたことが自分にとっては最高の思い出となりました。カレッジ制度や交流会を始め、どうしても集中して視野が狭くなりがちな研究生活をより柔軟なものにしようという大学側の様々な配慮にも感動しました。お世話になった先生方、カレッジの皆様、そしてこのような機会を与えてくださった先端研の皆様に心から感謝しております。ありがとうございました。

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クレアホールの学生さんと              ケンブリッジの街並み