東京大学

原田研究室

原田教授

マシンはどこまで進化できるのか?
機械独自の知能システム構築に挑む

「マシンインテリジェンス」の原田研究室がめざすのは、機械独自の高度な知能の開発だ。リアルワールドの情報とサイバースペースのビッグデータを結びつけ、強力なコンピューティング能力を駆使して世界を理解する。モデルを人間の知能に限定することなく、情報数理の原理原則にのっとり、パターン情報処理や知能情報処理の最適化を追究する。最終的なゴールは、高度な機械知能を備えた自ら学習し知識を発見する機械を創出することだ。

自律的に行動するロボットを、いかにして作るか

機械知能の研究とは何か。具体例でお話ししましょう。

例えば画像認識の精度を高めたいとします。認識に有利な画像の特徴量抽出や分類器構築をするには、線形代数、確率統計、情報理論などの知識を総動員しなければなりません。そのため数学の教科書を読み返し、関連論文に目を通すなどして、必要な知識をインプットするのが研究のスタートです。続いて、認識したい対象の本質を見つめて、必要となる要素を列挙し課題として定式化します。定式化した課題を解くために、得た知識を咀嚼して新たな理論やアルゴリズムを創出します。原田研では、人間の画像認識にモデルを限定することなく、あくまでも機械にとっての最適な手法を追究します。

理論やアルゴリズムを書き起こせたら、それが本当に実環境で機能するかを確かめます。プログラムを書いてデータセットを入力し、適切な評価指標を設定して結果を検証する。膨大な計算量を効率よくさばくため、並列処理など計算方法にも工夫が求められます。検証して問題なければ、新たな画像認識を開発できたことになります。

このような研究を始めたきっかけは、実環境で自律的に学習し、知識を発見する計算機やロボットを作りたかったからです。そのために必要となるコンピュータビジョン、自然言語処理や機械学習などの融合研究を進めてきました。機械に最適化された独自の知能システムを追究しています。

原点は、小学生のころのゲームづくり

要素研究にある程度めどがついた今は、次のステップとして、各要素を統合して物理的なロボットの構築も視野に入れています。自分が何を知らないのかを理解し、自らモチベーションをかきたてて学び続けるロボット。知能の最適解を人間に求めるのではなく、機械にとって最適な知能を実装したい。そんな思いも込めて分野名を「マシンインテリジェンス」としました。

実際にロボットをつくるとなれば、メンテナンスに相当な手間がかかります。1台のロボットをメンテナンスするのに3~4人の学生が必要で、メンテナンスと研究の時間配分を考えれば、9割ぐらいをメンテナンスに取られる可能性もあります。リアルなロボットは、それぐらい壊れやすいのです。

それでも、これまで蓄積してきたマシンインテリジェンスの知見を活かし、リアルなロボットを作り上げたいと思っています。ですので、本研究室では、コンピュータサイエンスを学びたい人に加え、ロボットに興味のある人も歓迎しています。

私自身は小学生のころ、なぜかプログラミングが好きでした。たまたま買った「BASICの本」を読み、プログラミングに興味を持ちました。家にはコンピュータがなかったので、家電量販店に通い詰め、展示品のパソコンを使ってゲームのプログラムを書いていました。もちろん店頭展示品なので、書いたプログラムをセーブしたりはできません。けれども、プログラム通りにゲームが動けば、それで満足だったのです。

自分が書き上げたプログラムに従って、ロボットが自律的に動く。そんなロボットの創造は、私にとって、小学生時代の遊びの延長線上にあるものなのかもしれません。

チャレンジの連続を楽しめるかどうか

私の研究室には、作ったものはすべて公開するという暗黙のルールがあります。考え出した手法、それを実装するプログラム、さらにはデータセットも含め、すべてをオープンにします。ですので、それらを公開した時点で、当該分野における我々のアドバンテージはなくなります。もちろん公開する内容については、完全に再現性が確保されていなければなりません。世界中の誰でもすぐに最先端の研究を享受できることが、コンピュータサイエンスにおける正しい姿だと考えています。

このように、誰しも平等にチャンスのある領域だからだからこそ、次の新しいテーマにチャレンジする意欲が湧いてきます。こうした日々の挑戦を楽しめる学生を歓迎します。

卒業生の進路としては、ベンチャーも含めたIT系企業に進む人,また在学中に起業する人も一定数存在します。もちろんドクター育成にも力を入れています。人のためになる機械知能をつくりたい。そんな望みを持つ人は、ぜひ当研究室の扉を叩いてください。

原田研究室の様子
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