東京大学

岩本研究室

岩本教授

設計からものづくりまで、
すべて自分の手でできる人を育てたい

光の波長と同程度の周期構造を持つ、「フォトニック結晶」という人工光学材料がある。光の技術に新たな可能性を開くものとして近年注目されている。岩本研究室では、このフォトニック結晶を利用して、光の情報伝送を飛躍的に進化させる技術の研究などに取り組む。他大学の研究室を含む複数のグループとの共同研究も活発に行っている。

フォトニクスを大きく進化させるための技術を

光を利用した技術、フォトニクスは、いまや私たちの生活に広く浸透しています。そのフォトニクスに新たな可能性を開くものとして「フォトニック結晶」は近年注目を集めています。私たちの研究室では、このフォトニック結晶を含むフォトニックナノ構造を用いて、光の情報通信などを進化させるための技術の開発を目指して研究を行っています。

特にいま注力している分野が「トポロジカルフォトニクス」です。ものの形に着目する「トポロジー」という数学の分野があり、その考え方を活かすかすと、フォトニック結晶に新たな機能を持たせることが可能になります。それにより、光回路を劇的に小型化する道が開けると期待されています。電子回路が小型化されたことで世界が変わったように、光回路の小型化も、実現すれば社会に非常に大きなインパクトを与えるはずです。

一方、当研究室では、半導体やダイヤモンドを用いた量子情報デバイスに関する研究など、トポロジカルフォトニクス以外の研究も並行して進めています。フォトニックナノ構造を利用するという点ではいずれも共通していますが、基本的にはメンバーの各人がそれぞれ、自分が研究したいと思うテーマに取り組んでもらっています。

高校の授業をきっかけに物理学の世界へ

私自身は、工学部の物理工学科にいたころに光に関する研究を始め、その後、博士課程を修了して生産技術研究所に入りました。それ以来、フォトニック結晶の研究を行っています。そうしてずっと研究者の道を歩んできたものの、実は修士課程のころまでは、自分が研究者になるとは思っていませんでした。

実家が建築業を営んでいたため、子どものころからなんとなく、自分も建築の道に進んで家業を継ぐものと考えていました。でも、高校の物理の授業がすごく魅力的だったのをきっかけに、気持ちが変化していきました。その授業は、教科書を使わずに毎回実験ばかりでした。まず結果を予想させ、実験をして、議論する。それがとても面白くて、物理学に興味が出て、大学では物理をやろうと思うようになったのでした。

しかし自分は移り気で、修士課程在籍時にはアクチュアリー(保険数理士)の資格を取るための勉強もしたりして、なかなか道が定まりませんでした。でもそうこうしているうちに、修士の研究で面白い結果が出て、「じゃあ、もうちょっと研究しようか」と博士課程に進み、その流れで現在に至ります。これをやりたい、というのがはっきりあったわけではなくて、その時その時でこれが面白そうだと思う気持ちに従って進んできたという感じです。

自分で手を動かし、悩み考えることに価値がある

私たちの研究室の強みは、設計や計算から実際のものづくり、そしてその評価までの全行程を自分でできる環境があることです。すべての学生にその全行程を経験してもらうことを方針としています。自分で手を動かしてものを作ると、大抵、予想通りには進みません。それだからこそ考えるし、多くのことが見えてくる。その過程こそ、研究において大切だと私は考えています。自分の発想で何かを思いついて、悩み考えながら、それを実際に具現化する。それは決して簡単なことではないし、その分、時間もかかりますが、そういう経験を学生時代にしておくことは必ず将来に活きてきます。

博士号を取るのは簡単ではありません。ある意味「自分の作品を作る」ということなので、やはり意志や情熱がないと最後までやり切れません。だから、研究が好きで、没頭できることは大切です。でも一方で、研究だけ、になってしまうのもよくない。研究にしっかりと打ち込みつつも、幅広くいろんなことに興味・関心を持っていてほしいと思っています。みなが互いにそのような意識で研究を進めていけるよう、私自身もますます力を尽くしていきたいです。

卒業後の進路としては、メーカーに行く人が多いですが、大学や国の研究機関の研究者になる人もいます。また、研究や開発以外の分野、たとえばコンサル系などに進む人もいます。個人的には、多様なキャリアパスがあるのはいいことだと考えているので、ここで学位を取ったあと、全く別な道に進むという選択も応援したいと思っています。いずれの道に進んだ人も、ここで苦労して博士号を取得した学生は、みなそれぞれの分野で活躍しています。

岩本研究室の様子
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