東京大学

西増研究室

西増教授

CRISPR-Casタンパク質とは何か?
その立体構造を解明し活用法を探る

「構造生命科学分野」の西増研究室がめざすのは、生命の根幹物質「タンパク質」や「核酸」の構造と機能の解明だ。なかでもゲノム編集ツールとして注目されているCRISPR-Casタンパク質-核酸複合体に着目し、革新技術の開発も視野に入れている。独自の技術力を活かしながら、共同研究を通じてイノベーションを起こす。その先に見すえているのは、生命現象の根幹を理解し、人類に恩恵をもたらしたいとの強い思いだ。

タンパク質の機能は構造が決める

タンパク質は、20種類のアミノ酸がつながった鎖によって構成されます。しかし、単にアミノ酸が鎖状につながっただけでは、タンパク質は機能を発揮しません。鎖状のアミノ酸が三次元的に複雑に折りたたまれ、特定の立体構造を形成したときに初めて、タンパク質は機能を発揮します。このタンパク質の立体構造の解明が、構造生物学の中核テーマです。

自然界には膨大な種類のタンパク質が存在しています。その1つが、2020年のノーベル化学賞につながったCas9タンパク質です。実は世界で初めてCas9-ガイドRNA-標的DNA複合体の立体構造を解き明かしたのは私たちです。

研究成果を応用して、適用範囲の広いゲノム編集ツールや新型コロナウイルスの世界最速検出技術などを開発してきました。自然界には多種多様なCasタンパク質が存在し、その多くは謎に包まれたままです。未知のCasタンパク質の構造と機能を解明できれば、生物学全体が大きく発展する可能性があり、そのための研究に取り組んでいます。

タンパク質の精緻なメカニズムを解明する

タンパク質のはたらきを理解するカギは立体構造です。ウイルスのタンパク質を構成するアミノ酸が、たった1つ置き換わっただけで感染力が大きく変わるケースもあります。世界を騒がせている新型コロナウイルスの変異株は、ウイルスの脂質二重膜にあるスパイクタンパク質を構成するアミノ酸が置き換わったものです。

ウイルスは非生物です。私が生物と非生物の違いに興味を持ったのは小学生の時でした。どちらも同じように原子から構成されているにも関わらず、なぜ生物と非生物のような本質的な違いが生じるのか。インターネットなどなかった時代ですから、小学校の図書館でいろいろ調べたりしました。

東京大学理科一類に入学し、当初は工学を専攻しようと考えていましたが、今ひとつ興味がわかない。ところが生命科学の授業でタンパク質や核酸に関する講義を聞き、生命科学に興味をもち農学部に進みました。実験によって新しいことが分かるのが面白く、寝ずに実験することもありました。

チャレンジ精神旺盛な性格で、勉学以外にも打ち込みました。子供の頃からプロレスや格闘技が好きで、大学では少林寺拳法部に所属し三段を取得しました。キックボクシングのジムにも通い、沖縄米軍基地でキックボクシングのメインイベントを務めました。さらに、30歳から始めたボクシングではプロライセンスも取得しました。

できたて、まっさらな研究室で思う存分好きな研究を

2020年8月、研究室を立ち上げました。このような機会はめったにないことなので、最高の環境を目指し、実験室から居室、教授室の細部に至るまでこだわってデザインしました。おかげさまで研究に打ち込める最高の環境が整ったと自負しています。

世界トップレベルの海外の研究者との幅広いネットワークも、西増研究室の特徴です。CRISPR-Cas9の研究でノーベル化学賞をとったJennifer Doudna教授、Emmanuelle Charpentier教授、さらに彼女たちとはライバル関係にあるFeng Zhang教授のいずれとも親交があります。特にFeng Zhang教授とは10年近く共同研究を継続しており、これまでに世界を驚かすような研究成果をいくつも発表してきました。

新しい研究室で、世界最先端の研究をやってみたい。そんな好奇心旺盛かつ積極的な人には、居心地の良い研究室だと思います。CRISPRだけでなく、様々なタンパク質に関しても研究しています。また、基礎研究だけでなく、応用技術の開発に挑戦したい人も歓迎です。たった一度の人生、一緒に世界を驚かせるような研究をしてみませんか?

西増研究室の様子
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