東京大学

矢入研究室

矢入教授

人間を支援し、機械を賢くする人工知能

知能工学矢入研究室では、人工知能を、「機械をより賢くすると同時に、人間の知的能力を最大限に発揮させるための手段」と捉えています。さまざまな興味・目的を持つ学生が集う自由な雰囲気のなか、人工知能や機械学習、確率推論、知能ロボティクスなどについて研究を行っています。主体的に学び、人とは少し異なる視点から研究テーマを提案できる学生にはピッタリだと思います。

大規模人工システムを見守る「教師なし学習」

知能工学研究室では、機械の知能と人間の知的活動支援の両方について研究をしています。現在注力しているのは、「データ駆動型のシステム健全性監視」と呼ばれているテーマです。工場やインフラ系の設備、人工衛星などの大規模で複雑なシステムが、安全かつ効率的に働いているかを監視するために機械学習を活用しています。

従来の監視体制は、人間の運用技術者による24時間監視や、専門家がつくったルールベースを用いて行なわれていました。そこに、データの背後にある仕組みを抽出する「教師なし学習」という機械学習を導入することで、より複雑化・多様化していくシステムに対して、リーズナブルなコストで異常検知に対応したりすることができるようになります。こうしたシステムでは、故障や不具合が起きた場合の損害が甚大なため、「教師あり学習」を用いるのに必要な過去のケースが非常に少ないのが特徴です。それに対して、過去に蓄積された正常データに「教師なし学習」を適用して正常モデルを学習し、新しいデータの「異常らしさ」を推定するアプローチは、異常データが少ないという課題を解決する手段として有効です。

航空宇宙工学から人工知能研究へ転身

私が人工知能の研究に入ったころは、第二次人工知能ブームが終わって冬の時代が到来したタイミングでした。ひところの熱狂的なブームは去りましたが、その分過度なプレッシャーもなく、好きなことを好きなように研究できる時代でもありました。

私はもともと宇宙工学を専攻しており、将来はロケットや人工衛星を開発する仕事に就くことを希望していました。大学院では堀浩一先生の研究室に入り、惑星探査ローバーを研究しようと考えていました。次第に関心が、ローバー本体や宇宙探査からローバーに搭載する知能に移っていきました。ローバーが周りの環境をどのように認識し、最適な行動を計画するかを経験から学習する知能の部分が面白くなり、人工知能研究に軸足を移して今に至ります。

個性豊かな学生が集う自由な研究室

知能工学研究室を一言でいうと、まず自由だということです。JST(科学技術振興機構)で採択されて予算のついている研究や、企業との共同研究などがあれば学生に「手伝ってくれないか」と声をかけることはありますが、基本的に学生も教員も自分がやりたい研究をやるのが堀先生の時代からの研究室の伝統です。学生たちも自分の研究に対する指針をしっかり持った自律的な人が多いように思います。

工学において重要な能力は問題解決能力ですが、うちの研究室の場合は、その前段にある問題を発見する能力、言い換えれば自分のやりたいことやテーマを見つける能力を重視しています。教員や他の学生たちとの議論や交流も含めたさまざまな経験から、徐々に自分のやりたい研究を見つけていくのが理想的だと思います。

研究室の方針とは別に、先端研ならではの環境という魅力もあります。先端研は東大の色々な分野の先生方が集まって成り立っています。そういう環境で東大のバリエーションに富んだリソースにアクセスする機会を持てるのは、非常に恵まれていると思います。

卒業生の進路もまたバリエーションに富んでいます。航空宇宙と人工知能の研究室なので、大手電機メーカーやシステムメーカー、最近は自動運転の技術を持つ人材が求められている自動車メーカーなどはもちろんですが、コンサル系や金融系、シンクタンクに行く学生もいます。また、在学中から自分のやりたいことを見つけてスタートアップを立ち上げる学生もいます。その一方で、飛行すること自体に夢を持って航空宇宙工学科に来た学生が初心を貫徹して航空会社にパイロット枠で進むこともあります。いずれにせよ、皆それぞれの興味と強みを生かして非常に多方面で活躍しています。

矢入研究室のホワイトボード
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